自転車で街を走っていると、様々な人とすれ違う。
いや、もちろん、歩いてようがスキップしてようが匍匐前進してようが、そりゃ誰かとすれ違うのは間違いないのだが。
自転車は速度が早い。 ほんの一瞬のすれ違い。 その時、耳に入る、すれ違った人の会話、独り言、鼻歌。
そうしたものを聞くとはなしに聞くのが好きだ。
ただ、時にはおかしなものが聞こえて来るようで…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
先日、僕は昼下がりの地元商店街を、自転車で走っていた。 と、 正面から、一組の母子連れが歩いて来た。
子どもの方は、小学校の低学年だろう、活発そうな男の子。 母親の手を握り、笑顔で話している。 微笑ましい。
心をほんのり温かくしながら、その子とすれ違ったまさにその時、耳に入った彼の言葉。
「さぁ、帰ったらお父さんと反省会しなきゃね!」
え? な、な、何? 反省会?
驚き振り返ろうとしたが、あいにく、僕は運動神経がよろしくない。脇見運転などしたら、六割の確率で電柱にぶつかる。 気持ちと裏腹に、僕はどんどん、母子から遠ざかって行った。
…一体、あの少年は、父親とどんな件で「反省会」をするのだろう。 「反省会」が好きなご家庭なのだろうか。
今もって謎である。
そうかと思えば、 今度は、信号待ちをしていた横断歩道で、酒臭い初老の男と隣り合った。
よれたTシャツにハーフパンツ、サンダル。頭は綺麗に禿げ上がっている。 漫画に出て来そうな“近所のオッサン”だった。
オッサンもまた自転車に乗っており、信号待ちに飽きたのだろう(交差点で、青になるのが遅いことで有名な場所である)、隣りの僕にお構い無しで、鼻歌を唄い始めた。
「いや〜よ、いや〜よ、いやよ見つめちゃいや〜」
大丈夫だ。僕はあなたを見つめたりしない。 信号早く変われっ!
「ちゃちゃちゃ、ハニー、クラッーーーシュ!!」
待て!違う、違うぞ! クラッシュじゃない、フラッシュだ! この際、なぜ鼻歌にキューティーハニーをチョイスしたのかという疑問は抱かないでおく、だが、その歌詞間違いは指摘せざるをえないっ! フラッシュだ、クラッシュじゃない、ハニーがクラッシュしたらそんな陽気でいられないっっっ!!!
が、オッサンは、そんな僕の心の慟哭に気付くはずもなく、にわかには信じられない速さで横断歩道を駆け抜けて行った。
ちなみに、信号はまだ赤である。
自転車で街を走る。 秋風と共に聞こえ来る、不思議な音色がそこにある。
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追記 劇団月の砂漠の10月公演について、ご予約頂きました皆様、どうもありがとうございます。
皆様に楽しんで頂ける作品をお届け出来るよう頑張って参ります。 どうぞご期待下さい。
観覧ご希望、まだまだ受付中です。 皆様、ぜひぜひ宜しくお願い致します! (公演詳細は、前回日記をご参照下さい)
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