歓喜!

 1キロ痩せたっ!(≧∀≦)/

【2007/11/30 01:41】 | 月の砂漠 | トラックバック(0) | コメント(0)
悲劇



2キロ太った・・・


【2007/11/23 01:15】 | 月の砂漠 | トラックバック(0) | コメント(0)
異議ありっ!
今日のテーマ「異議ありっ!」


 おう、俺だ。A島だ。
 随分と久しぶりだが、まさか、俺のことを忘れちゃいねぇだろうな?
 そうだ。以前、何度かこのブログを、本来の筆者であるMMの代わりに書いてやったA島だよ。
 俺が適当に書き殴ってやった文章は、普段のMMの駄文より数倍好評を得たと聞いている。MMの奴、以来、俺に代筆を頼むことをしなくなった。まったく器の小さい男だ。

 そんな俺が、どうして久方ぶりに登場したかと言うと、それには深いわけがある。
 いや、深い、と言うより、不快、と言うべきか。
 このブログは、MMに頼まれたわけではなく、俺があいつの隙を突いて、勝手に更新したものだ。

 これだけは書かねばなるまい。そう思ったゆえの所業だ。
 書きたいときに、書きたいものを書く。
 それが俺の生き様だ。

 まぁ、そんな能書きはどうでもいい。
 とりあえず、皆に聞いてもらおう。
 まったく、あの日のことは、悪夢としか言いようがない。

☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 その日、俺は、とある電車に乗っていた。
 とある、と意味ありげに書いてみたが、ここにそれほど意味はない。京浜東北線だ。
 そんなことはどうでもいい。

 とにかく、俺は電車に乗っていた。特に行く当てがあるわけではない。
 しいて言えば、乗りたくなったから乗った。ただそれだけのことだ。それが俺の生き様だ。京浜東北線だ。
 ときおり車窓の景色に目を向けながら、文庫本を読む。
 俺にとって至福の時間だ。仕事で忙しい日々の骨休みに、そんな時間があってもいい。

 しばらく、そんな至福の時間を過ごしていると、電車がどこかの小さな駅に止まり、一人の男が乗って来た。
 俺は心の中で舌打ちした。
 MMだ。
 俺は自分の不幸を呪った。せっかくの休日に、どうしてMMと出会わなければならないのか。まったく今日は厄日だ。

 ラクダ色のレザージャケットに妙な形のリュックを背負って、MMは車内をきょろきょろ見回している。大方、空いている席を探しているのだろう。相変わらずあさましい男だ。
 車内は混雑しているというほどでもなかったが、座席は全て埋まっていた。俺は間違っても気付かれないように、視線を落とした。早く隣りの車両にでも行ってくれ。

 ふいに、それまで俺の隣りに座って居眠りしていた中年の男が目を覚ました。
「あっ、しまった」
 と小声でつぶやき、いそいそと電車を降りた。どうやら寝過ごしたようだ。

 そのとき。
 空いた俺の隣りを目掛けて、MMが猛然と突っ込んで来やがるではないか!
 MMは、普段からそれくらい動けよ、と言いたくなるほどのスピードで、俺の隣りを奪取した。
 何という悲劇だ。貴重なプライベートタイムに、何が悲しくてMMと隣り合わせて座らなければならないのだ。これは何の罰ゲームだというのか。
 MMは、そんな俺の苦悩を知るはずもなく、ふぅ、などと、安堵の溜息を吐いた。
 そして。
 俺を見た。
 俺は目を逸らした。
 MMは、なおも無遠慮に俺の顔を覗き込む。
 俺はあらぬ方を向き続ける。
 やがてMMは小首を傾げて、元に直った。

 気付かなかったのか!?

 俺は少なからず衝撃を受けた。鈍い男だとは知っていたが、まさかこんな至近距離で俺がわからないとは!
 と。
 俺はここであることを思い出した。
 ああ、そうだ。
 俺は変装していたんだ。

 俺は、色の濃いサングラスを掛け、カイゼル髭を付け髭して変装していた。
 稀に動物的直感力を働かせるきのこあたりならいざ知らず、MMごときにこの変装を見破れるはずがない。MMがもしホームズだったら、ルパンはあまりの張り合いなさに泥棒稼業から足を洗ったかも知れない。

 ん?
 どうして俺がそんな変装をしているのかだと?
 知りたがり屋は怪我をする。とだけ答えておこう。
 些細な疑問は回答するに値しない。

 さて。
 俺の隣りに腰を降ろしたMMは、何やらリュックをごそごそし始めた。中から取り出したのは・・・

 任天堂DS。

 やれやれ。うっかり改行までしてDSを強調しちまったが、よくよく考えればそんな大したことではない。
 数日前に、MMがDSを買ったというのは、風の噂で知っていた。MMの身辺情報など、俺にダダ漏れである。
 MMが、そのご自慢のDSの電源を入れる。

「ぴぽーん」

 と大きな電子音がして、電源オンを教えてくれる。MMは慌ててボリュームをゼロにした。何と迷惑な男だろう。
 一体こいつは何のゲームをやっているのか。俺はつまらない好奇心を起こし、DSの画面を覗き込んだ。MMが本体を持つ角度は、丁度俺の視界のベストポジションだ。ふふん、MMの脇の甘さはこんなところにも現れている。

 画面上には、頭のつんつんした青年のキャラと、その青年に寄り添う少女のキャラが写っている。キャラ同士の会話らしきテキストから、青年は弁護士、少女はその助手だとわかる。

 はて、これは何のゲームだ?
 確か、比較的有名なゲームだったはずだ。俺は実際にプレイしたことはないが、雑誌か何かの宣伝で目にしている。
 法廷で、主人公の弁護士が検事と対決して・・・
 そんな内容だった。
 そこまでわかっているのに、タイトルが思い出せない。
 くそっ、俺も耄碌したもんだ。
 知っていることを思い出せないと、無性に苛々する。煙草の一本でも吸えば記憶を呼び覚ませそうだが、あいにく車中だ。京浜東北線だ。
 再び画面を見ると、シーンは殺人事件現場の検証だった。
 MMはタッチペンを滑らせながら、事件解明の鍵になりそうなところをマークしようとするが、タッチペンの扱いがビックリするほど下手クソで、あらぬところをチェックしては「あっ」などと独り言を漏らしている。

 このゲームのタイトル・・・
 ああ、ここまで出掛かっているのに!
 俺は何気なく車窓に目を向けた。考えが煮詰まったときは、一旦、何も考えなくするのが良い。
 眼下には、河川敷が広がっていた。小さな草野球場で、小学生たちが白球を追い駆けている。川岸では、数人の釣人が思い思いに竿を垂らしている。
 のどかだ。

 ふいに、小高い土手の向こう側で、誰かが横断幕のようなものをバサっと広げた。
 ほぉ、と思った。有名な映画のワンシーンみたいだ。
 列車に乗って遠い町に旅立つ友に、ありがとう、だったか、また会おうね、だったか、そんな文字を記した横断幕を土手から広げる少女。車内でそれを見た少年は、車窓から身を乗り出して、涙と笑顔の入り混じった眩しい顔で少女に手を振る。
 きっと、その映画に感銘を受けた、ちょっぴりいたずらっ子な小学生あたりが、それを真似して遊んでいるのだろう。
 俺は横断幕の文字を見た。

「ぎゃくてんさいばん」

 ・・・?
 ぎゃくてんさいばん?
 何だ、何を言っている?
 ぎゃく・・・ぎゃくてん・・・逆転・・・

 逆転裁判!

 それだ、MMがやっているゲームのタイトル、逆転裁判だ、間違いない、完全に思い出した、いや、教えられた!
 あいつは誰だ!?
 俺は、すでに小さくなりかけている、横断幕の主を見た。

 きのこだ。。。

 電車は速度を変えずに走り続け、きのこは見えなくなった。

 えーっと・・・
 突っ込みたいことはいっぱいあるが、今は気にしないことにする。俺は細かいことにこだわらない男だ。その点、MMとは人間の格が違う。

 視線と思考をMMに戻す。
 MMは、夢中で逆転裁判に、ふふん、やっと思い出したぜ、没頭している。
 と。
 MMの動きが止まった。
 表情を盗み見ると、困惑が伺える。どうしたのか?
 画面を見る。
 シーンは、殺人現場で入手したらしい証拠品に犯人の指紋が残っていないかを調べるところだった。
 台詞ウインドウを読んでみると、

『指紋採取の粉を、画面に向かって息を吹きかけて飛ばせ』

 との指令が書かれていた。
 なるほど、と思った。これが、家庭用固定ゲーム機にはないDSの特性の一つだ。タッチペンを使うところからもわかるように、DSの画面は圧力に反応する。画面に向かって息を吹きかけるという物理的な動作を関知できるということだ。

 MMは困った顔のまま動かない。
 俺は笑いを噛み殺した。
 こいつ、迷ってやがるのか。
 電車内で、つまり公衆の面前で、DSに向かってふーふー息を吹きかけるという行為に恥じらいを覚えてやがる。
 先述したように、DSの画面は圧力を関知する。従って、実際に息を吹きかける必要など、実はない。指で画面をこすれば済むことなのだ。
 だが。
 MMは理科音痴だ。圧力、という言葉を知っているかすら疑わしい。いや、それは知っているか。いつもきのこに掛けられてるからな。だが、ここで言う圧力とはそういう意味ではない。

 やがて、MMは、何かを決意した顔になった。
 そうだろうな。いくらこいつでも、これだけ乗客がいる車内で痴態を演じることはしまい。ましてや京浜東北線だ。セーブして一旦プレイを中断することに決め

「ふー、ふー、ふー」

 そんなバナナ!
 吹きやがった。
 DSの画面に向かって、ふーふーしやがった。
 付近の乗客数人が、くすくす笑っている。MMの決意とは、こっちの道を選ぶことだったのか。
 画面上に、犯人のものらしき指紋が浮かび上がった。
 科学捜査官の笑顔が映し出される。
 MMも同じくらい笑顔になっている。
 俺は震えが止まらなかった。


 俺は我に還った。
 どうやら、しばらく気を失っていたらしい。
 無理からぬことだ。あんなふーふー見せられては。
 MMは、相変わらず一心不乱に逆転裁判をやっている。
 どれくらい進んだのか。俺はまた画面を覗き見る。

 ゲームは、法廷シーンに移っていた。
 主人公の弁護士が、証人(実は真犯人のことが多い)の発言の矛盾を暴き、追い詰めて行く見せ場である。
 ボタンを押すか、又はタッチペンを操作すると、
『異議ありっ』
 と、主人公が叫ぶのである。

 ふいに、またMMの動きが止まった。先程にも増して困惑顔を浮かべている。
 今度は何が起きた?
 画面の台詞ウィンドウを見ると、

『マイクに向かって、異議ありっ!と叫ぼう』

 とある。
 俺は唸った。これもDSの特性の一つだ。本体内蔵のマイクに向かって声を発することで、それが関知される。ファミコンのツーコン以来の画期的なアイデアである。

 MMは額に汗を浮かべている。油汗だ。
 まさか・・・まさかこいつ、やるつもりか!?
 だが、いくらMMと言えども、そこまではしまい。繰り返しになるが、公衆の面前なのだ。車内なのだ。息をふーふーまでは羞恥心を押し殺せても、マイクに向かって「異議ありっ!」は有り得ない。その行動にこそ「異議ありっ!」だ。

 今度こそゲームを中断するか?
 それとも・・・いや・・・まさか・・・
 と。
 MMの顔付きが変わった。何かひらめいた顔だ。
 その表情を見て、俺は察した。なるほど、どうやらMMめ、気付いたらしい。

 説明するまでもないと思うが、マイクは、言葉そのものまではさすがに関知できない。
 つまり、マイクに向かってはっきり「異議あり!」と叫ばなくても全然構わないのだ。例えば、息を吹きかければいい。
 息ふーふーなら、すでにこいつはやっている。その一線は踏み越えてしまっている。MMはそれに気付き、マイクに向かって息ふーふーする決意を固めたのだろう。慣れとは恐い。

 MMは、DSを口元に近付けた。
 ふーふーか。本当に懲りない奴だぜこい

『・・・異議あり』

 俺は腰を抜かさんばかりに仰天した。
 言った。
 異議を申し立てやがった!
 しかも、すっごい小声で。
 何てこった。MMが“気付いた”のは、
「叫ばなくてもいいかも」
 という点だったのだ。ってゆーか何でそこ?

 正面の席に座っていた幼子が、
「ねーねー、あれなーにー」
 MMを差して笑う。
「見ちゃだめよ」
 母親がそれをたしなめる。正しい教育だ。

 MMが辛そうな表情を浮かべる。
 それはそうだ。さしものMMも、今、自分が置かれているあまりにも恥ずかしい状態に気付・・・
 違った。
 画面を見てわかった。
 シーンが進んでいない。
 MMの、ぼそっとつぶやき異議あり作戦は失敗した。マイクはその声を拾ってくれなかった。MMはそこに辛さを感じていたのだ。ただの恥のかき損だ。
 MMの顔付きが再び変わる。それは、何かを決意した者だけが見せる、どこが凛々しさすら感じさせるものだった。
 やめろMM、引き返すなら今だ、今ならまだ間に合

「異議ありっ!」

 間に合わなかった。
 MMは明言した。
 異議あり。
 少しだけ悲しげな声で。
 車両内のほとんどの乗客がこちらを見る。当然だ。こんなに堂々と異議を主張されたのだ。ある意味、MMの大逆転だ。
 俺は画面を見る。
 シーンが先に進んだ。
 そして、MMもどこかへ進んだ。もう帰って来ないかも知れない。帰って来なければいいと思った。

 しばらくして、MMは目的地に着いたようで、あっさりセーブして電源を切り、電車を降りて行った。

☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 これが、思い出すのも恐ろしい、あの日の顛末だ。
 俺は、いかにあのときのMMが恥ずかしかったかを本人にわからせるため、あえて、この事実の公表に踏み切る。

 と。
 ここまで書いたとき、メールを受信した。
 MMだった。何だ一体?
 文面を見る。たった一文だけ記されていた。

「ひげありっ!」

 何だこれ?
 さっぱり意味がわからない。いたずらメールか。
 ああ、そうか。異議ありっ、に凝ってしまったのか。そんなようなことを言いたくて仕方ないんだな。
 ふぅ、やれやれだぜ。
【2007/11/11 21:23】 | 月の砂漠 | トラックバック(0) | コメント(0)
初めてのテレビ
今日のテーマ「初めてのテレビ」


 先日、テレビ番組の収録に参加して来た。
 BS−i(TBS系列のBSチャンネル)の『BS王様のブランチ』という番組の1コーナーである。
 これまでにテレビ番組を「作る」立場の経験はあったが、自分が出演するのは初めての経験だった。
 今日はそんな話をしてみようと思う。

☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 業界関係者から出演の話をもらい、番組の担当ディレクターと電話で数回打ち合わせをした。
 番組内容はいたってシンプルで、
『90秒間、何でもいいからパフォーマンスしてくれ』
 ということだった。
 劇団のPRになることでもあり、断る理由は何もない。ぼくは出演を快諾した。

 さて、出るとなったからには、キャストを取り揃える必要がある。そこでさっそく、劇団員に連絡を取ることにした。
 別にゴールデンに冠番組を持つというような大袈裟な話ではないにせよ、テレビはテレビである。出たい出たいの大合唱となることは目に見えているが、まさか全員総出というわけにもいかない。その調整に手間がかかるかなと危惧しつつ、まずは団員Xに電話する。

ぼく「というわけで、テレビだ」
X「して、収録日は?」
ぼく「水曜の昼」
X「会社だ」

 数秒で会話が終了した。
 日々の仕事は大切である。やむをえない。
 気を取り直して、今度は団員Pと交渉する。

ぼく「テレビ出るぞー」
P「その日はバイトが」
ぼく「バイト? 何の?」
P「インド洋までマグロを獲りに」
ぼく「は?」
P「あ、もうすぐ出航なので。では」

 数秒で交渉は決裂した。
 マグロは大切である。ぼくも大好きだ。やむをえない。
 立て続けに2人に出演を断られたが、むしろ交通整理がスムーズに出来たと思うことにする。
 今度は団員Qである。

団員Q「テレビ・・・無理だな」
ぼく「なぜだ?」
団員Q「面が割れる」
ぼく「・・・困るのか?」
団員Q「ああ。稼業がしづらくなる」
ぼく「稼業とは?」
団員Q「説明しなきゃならんか?」
ぼく「いや、結構だ」

 Qはくわえていたマルボロを灰皿に押し付け、カミュの残りを一息に飲み干した。触れられたくない秘密の一つや二つ、誰にでもあるのものだ。詮索するのは野暮だろう。俺は目の端でQの苦みばしった表情をとらえ、この街に巣食う闇は根深い、そんなことを思っていた。

 ・・・などと、わざわざ一人称を「俺」に変えて、不出来なハードボイルドを気取っている場合ではない。
 ぼくは冷静さを取り戻し、取り戻したら、収録日はもうすぐだという事実を思い出し大層慌てた。
 ぼくはわたわたと他の団員に連絡を飛ばす。

団員L「今、大統領選の準備に手一杯で」
ぼく「どこの国?」

団員#「一緒に赤福でも食べます?」
ぼく「遠慮しとく」

団員%「日ハム負けたね」
ぼく「うるさいっ、そこに触れるなっ!」

 最後の一人への電話を切った。
 何ということか。
 出演者が誰もいないではないか。
 まったく何ということだろう。せっかく代表であるぼくが、団員のためを思い、テレビ出演の話を取って来たというのに、手ひどい仕打ちである。この劇団にテレビ担当能力があるとは思えない。そうだ、いっそ代表辞任を申し出よう。そうすればみんな慌てて、ぼくに翻意を求めるはずだから、ぼくはそれを受けて「ありがとう」と涙ぐんで、恥をさらしますと言えば、我らは一致結束するに違いな電話が鳴った。
 担当ディレクターだった。

ぼく「は、はい」
担当D「何人で収録に参加されますか?」
ぼく「え、えーっと」

 ゼロですとは言えない。仕方ない断ろう。
 だいたい、テレビ出演にはデメリットが多過ぎる。地上波でないとは言え、チューナーがあれば全国どこでも見られるBSなのである。
 番組が放送されれば出演者は一躍人気者となり、街頭で見知らぬ人々にサインを求められきゃあきゃあ言われ、財布は莫大なギャランティーでほっくほく、番組を見たジョージ・ルーカス監督あたりが「次のスターウォーズにぜひ」と家まで押しかけて来て・・・

担当D「で、どなたが出演されるんです」
ぼく「私が一人で出演します」

 ぼくはぼくとの交渉を締結した。

☆     ☆     ☆     ☆    ☆

 収録当日。
 ぼくは指定された都内某スタジオに向かうため、タクシーに乗り込んでいた。
 スターを気取ったわけではない。当日朝、うっかり寝過ごして時間がなかったのである。前夜、サインの書き方を練習していたらすっかり空が白んでいた。
 車中でぼんやり考える。一体、どんな豪華なスタジオがぼくを待っているのだろう。広々としたフロアに、多くのスタッフが走り回る光景が浮かぶ。ネットが隆盛する現代とは言え、メディアの王様はやはりテレビであろう。

タクシー運転手「着きましたよ」
ぼく「御苦労」
タクシー運転手「○○円です」
ぼく「うむ」
タクシー運転手「あ、お客さん」
ぼく「構わん。釣りは取っておきたまえ」
タクシー運転手「百円足りません」

 排ガスを撒き散らして去って行くタクシーを見送りながら、周囲を見渡す。さて、豪華なスタジオは・・・
 見当たらない。
 複数の雑居ビルやコンビニが並ぶだけの通りである。
さてはあの運転手、間違えやがったか!
 ぼくが憤怒にかられ、猛然とタクシーを追い駆けようとしたそのとき、目の隅に一棟のビルのテナント表示版が入った。
 ぼくが目指すスタジオの名が記されていた。
 ごく普通のマンションの一室である。

「・・・そ、そうさ。スタジオなんてのは、テレビだと立派に見えるけど案外こじんまりとしているもんさ」

 ぼくは側に誰もいないのにそうつぶやき、マンション内にいそいそと足を踏み入れた。

 スタジオでは、すでに複数のスタッフや出演者がおり、慌しく動いていた。
 広くはないマンションの一室に、カメラや集音マイクやモニターが取り揃えられ、一層狭さを感じさせる。それでも、それが決して不快でないのは、現場独特の熱気があるからだろう。ADの一人が、笑顔で軽口を叩いて、番組MCの女性タレントを和ませていた。
 ディレクターと簡単に挨拶を済ませ、ぼくもスタンバイに取り掛かることにした。
 普段は髪型などあまり気にしないが、何と言ってもテレビである。粗相のないように繕わなければなるまい。

ぼく「あの」
AD「はーい、どうしましたー」
ぼく「ヘアメイクさんはどこに?」
AD「は?」

 いないらしい。それはそうだ。ぼくは洗面所に入り、水と手櫛で髪型をセットする。
 ドーラン・・・
 ふいにそんなワードが浮かんだ。そうだドーランだ。テレビに出るからには、顔の小じわや染みを隠さねば。そのためにもドーランは必須アイテムである。

ぼく「あの」
AD「はーい、どうしましたー」
ぼく「メーキャップアーテストはどこに?」
AD「は?」

 いないらしい。当たり前である。賢いぼくは、すでに現実に気付き始めていた。ドーランなど携帯していないので、とりあえず油取り紙で顔を拭く。おどろくほど油ぎとぎとで笑った。笑っている場合ではない。間もなく本番である。
 小走りでフロアに戻ると、MCタレントに声を掛けられた。ぼくより数歳若い、きれいな女性である。

美女「今日はお一人ですか?」
ぼく「は、はい」
美女「えー、寂しー、かわいそー」

 美女は切ない顔をした。こんなうら若き美女に悲しい思いをさせてしまうとは、まったくぼくも罪な男である。明日からはミスター女泣かせと名乗ることにしよう。

 そんなこんなで収録が始まり、そしてつつがなく終了した。
 ディレクターと少し会話を交わし、場はお開きとなる。
 さて、ぼくにはまだ大仕事が残っている。
 ギャラの交渉である。
 あまりにも金額が多ければ、節税対策のアドバイスをもらわなければならない。想像を絶するほどの金額であれば、寄付する先の慈善団体の情報を聞かねば。

番組D「お疲れ様でした」
ぼく「あの、ギャ、ギャラなんですが」
番組D「また機会あれば、ぜひご出演下さい」
ぼく「スイス銀行赤羽支店に振り込んでおいてくだ」
番組D「ではまた」

 現実は厳しい。
 まぁ、だから面白いとも言える。

☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 こうして、ぼくのテレビ初出演は無事終了した。
 普段は表舞台に出ない人間が、調子に乗ってしゃしゃり出てしまった番組なので、ぜひ見ないで頂きたい。
 が、見ないでと堂々と言うとディレクターに怒られるので、こんなぼくが恥をさらしている姿をせせら笑ってやろうという意地悪な方、ぜひご覧下さい。

11月10日(土)昼
BS−i『BS王様のブランチ』
 である。
 ぼくの出演シーンが全面カットされていても、抗議苦情は一切受け付けないのであしからず。

【2007/11/08 01:01】 | 月の砂漠 | トラックバック(0) | コメント(3)
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Author:劇団 月の砂漠
劇団「月の砂漠」
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