【迷探偵まことの事件簿】 FILE NO.1 『消えたR氏を探せ 〜解決編〜』
[前回までのあらすじ] 迷探偵まこと(ぼく)は友人R氏と食事の約束をしていたが、当日になっても上手く連絡が取れない。 ようやく繋がった一本の電話も、通話状態の悪さ&まことの携帯充電ミスにより、肝心なところで切れてしまった。 しかし、まことはその電話から、R氏の現在地を推理したのだった・・・ (詳しくは8月23日付けの記事参照)
人々の行き交う雑踏・・・ 間もなく、8番線に電車が参ります・・・ そこの、ほら、銅像あるでしょ?・・・ 要するに、し・・・
これらのヒントから導き出される答えは一つ。 渋谷だ。 R氏は渋谷にいる。 渋谷のハチ公前。そこにいるに違いない。
ぼくは電車を乗り継いで、渋谷に向かった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
渋谷に着いた。 ぼくは、切っていた携帯の電源をオンにする。バッテリーがわずかながら回復している。これなら、一回くらいは電話可能なはずだ。 ぼくはR氏の番号をコールする。
とぅるるるる・・・ とぅるるるる・・・ とぅるるるる・・・
出ない。 まぁ、ここまでの展開を考えれば、むしろ出ない方が当たり前だな、などと思ってみたところ、 「はい、R」 おお出やがった。
R 氏「どうしたんだよ、途中でいきなり」 まこと「いや、ちょと切れちゃって」 R 氏「え、キレてるの?」 まこと「キレてないですよ」 R 氏「はぁ?」 まこと「いや失礼。つまり電源の方が」
って、そんなことしている暇はない。ぼくの電話の寿命はもう少ない。
まこと「とにかく、ぼくはいま渋谷だ」 R 氏「え?」 まこと「R君も渋谷にいるんだろ?」 R 氏「ううん、いない」
ぼくはその場でひっくり返った。いない。まさか、ぼくの推理がたった一言で全否定されるとは。
まこと「し、渋谷じゃないの?」 R 氏「うん。上野」
う・え・の?
まこと「銅像って・・・じゃあ」 R 氏「西郷さん」 まこと「ああ・・・」 R 氏「って言うか、西郷どん?」 まこと「どっちでもイイよ!」 R 氏「いやね、西郷って名前をド忘れしてて」 まこと「で、でも“し”って・・・」 R 氏「不忍池(しのばずいけ)」
謎は全て解けた。 今度こそ、本当に。
まこと「じゃあ、上野にいるんだね?」 R 氏「いや、いま俺は・・・」
R氏が告げた居場所は、R氏の勤める会社の本社がある場所。 要するに、ぼくがさっきまでいた場所だった。
まこと「ああ・・・そうでしたか」 R 氏「でさ、そしたらさ」
休日出勤中の先輩に遭遇して、この後一緒に飲みに行こうと誘われ、渡世の義理ってやつで断れぬ、とか何とかR氏は弁明していたが、その声がぼくの耳にあまり入って来なかったのは電話のせいではない。
R 氏「だから、食事は日を改めて」 まこと「うん。いいよ」
もうどうでも。
R 氏「じゃあ、また俺から連絡す」
電話が切れた。 バッテリーが尽きたようだ。 ぼくは、渋谷を行き交う雑踏の真ん中で、充電して下さい、という表示が浮かぶ携帯の画面を眺め、しばらくぼんやり立ちつくしていた・・・
その後、R氏とは連絡を取っていない。 したがって、R氏があのとき本当に上野→本社に居たのかどうか不明である。 まあ、本人がそうだと言うのだからそうなのだろうけど、それでも、ぼくはふと思う。 やっぱりR氏は、悪の手先に捕らえられていたのではないか。ぼくがR氏を助けに向かっていることを察した悪の手先は、R氏を脅迫し、ぼくが来ることを阻もうとしたのではないか!
・・・まさかね。
ちなみに、今日もR氏からの連絡はなかった。
FILE NO.1 『消えたR氏を探せ』 −完−
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