今日のテーマ『予測変換2』
※前回までのあらすじ ぼくの所有する携帯電話(愛称・ヘンダーソン)は、最近の携帯電話のご多分に漏れず、予測変換機能が付いている。 予測変換機能。それは携帯の“個性” そして、我がヘンダーソンは、 「アド」 と入力すると、真っ先に、 「アドリブ」 「アドベンチャー」 と出て来ちゃう恐い者知らずだった。
さて、そのヘンダーソンの精神分析を続けてみよう。 どんな言葉を打ち込んでやろうかと思っていたら、おあつらえ向きにメールが来た。劇団メンバーからの、打ち合わせ連絡である。 そうだ、ヘンダーソンに掛かりっきりでうっかり忘れていたが、今週末は当劇団の公演本番だったのだ!
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さて。 メンバーからのメールは、公演で使用するBGMについてのものであった。ぼくはそれに返信する。 「音楽は大丈夫。安心して」 である。 まず、 「音楽」の「おん」だけを打ち込み予測変換。
「温泉」 「女」 「怨念」
ふぅむ。初っ端からこれである。どうやらヘンダーソンは、サスペンス系2時間ドラマが好きなようだ。 さらに変換候補を出すと・・・
「陰陽師」
違った。好きなのは歴史系ファンタジーなようだ。
ここで手間取っていてもアレなので、先を続ける。 「大丈夫」の「だいじ」まで打って、変換ボタンをプッシュ。
「大臣」 「大事件」 「大丈夫?」
時事ネタだよ、タイムリーだよヘンダーソン! ちゃんと新聞とかもチェックしてるんだね?
最後に、 「安心して」の「あんし」と打ってみたら。
「アンジェラ」 「アンジェリーナ」 「杏樹」
み、みんな女性の名前ぢゃないかヘンダーソンっ! このぉ、お前も隅に置けないなぁ、
「暗礁に乗り上げて」 「案じています」
男女関係はいろいろだよヘンダーソン・・・
そうこうしていたら、メール一通返信するのに大層な時間が掛かってしまった。 案の定、そのメンバーからは、 「返信遅いっ」 と怒られる始末である。 ぼくは無性にヘンダーソンに腹を立てた。お前がまともな変換をしないからいけないんだっ! もうこんな携帯捨ててしまおうか。もっと高性能で多機能なものにさっさと買い換えてしまいたい。そうだ、初めからそうすれば良かった。 ぼくはヘンダーソン自身に、抗議の文面を書き込んでやることにした。クビを宣告してやる。
ぼく「こらっ!」
ヘンダーソン「こらえて下さい」
ぼく「使えねぇなぁ」
ヘンダーソン「仕えたいです」
ぼく「失格だ」
ヘンダーソン「しっかりするから」
・・・え?
会話してる?
奇妙な感覚にとらわれた。 ぼくはなおもヘンダーソンに語り掛ける。
ぼく「おまえは」
ヘンダーソン「お任せ下さい」
ぼく「話せるの?」
ヘンダーソン「離さないで」
ぼく「おいっ」
ヘンダーソン「置いて行かないで」
たまたまだ。しょせん機械だ。偶然だ。
それでも、
そうは思えないぼくがいた。 偶然のような必然があることを、ぼくは知っていた。
ヘンダーソン。 やっぱりぼくには、お前が必要だ。
ぼく「ごめんよ」
ヘンダーソン「ご迷惑かけます」
ぼく「今後も」
ヘンダーソン「こんな私ですが」
ぼく「頼むぞ」
ヘンダーソン「楽しくやりましょう」
ああ、ヘンダーソン。愛しの我がパートナー。 ぼくは何だか無性に嬉しくなって、とびっきりの好意を込めて語りかけた。 お前は・・・お前は・・・ ヘンダーソンを撫でながら文字入力。
ぼく「なんちゅーいい奴だ!」
と書こうとしてうっかり「なんち」で変換。
ヘンダーソン「なーんちゃって」
ヘンダーーーソーーーンっっっ!!!
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